私は指先で「世界」を作り直すことで、世界のからくりを解りたいのです。

私の制作は実際の風景を縮小模型に作りかえるところから始まります。
実際に縮小模型を作ることで、今まで見過ごしていた事柄を理解したり、その風景に別の意味を見出すこともあります。
制作する過程で自分自身の意識もゆれ動き、模型細部に微妙な誤差が追加されます。
この過程を繰り返すことで、再現した模型と実在する物との距離感が私唯一のものになります。

メジャーを手に、実在するコンビニエンスストアや電車の車内、幹線道路、新築マンションなどを実測し、それをある比率で縮小したジオラマを忠実に再現した上で撮影します。(4×5inchフィルムにて)
仮設のジオラマは撮影後に壊し、撮影されたイメージは実体を持たない影になり、ますますある種の遠い感覚を獲得してゆきます。

模型は不完全な存在です。模型をとおして‘本物そのもの’へ注目することでより現実を感じ取ることができるようになるのです。

展示は、縮小模型を撮影した大型写真を展示します。
縮小模型の大型写真を展示することで、展示空間全体のスケール感に違和感が生じます。
観客はこの実態のないイメージ(写真)を鑑賞することで改めて現実を感じ取ることになります。


>> 制作風景

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